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アメリカでCS博士課程に合格するための戦略について考える

はじめに

この記事で書かれている内容は2022年2月現在の内容であり、筆者の個人的な見解を多分に含みます。 出願までのプロセスについては、日本の学部からアメリカのコンピューターサイエンス博士課程に出願する - あさりさんの作業ログ船井財団の奨学生の方々の報告書に詳細がまとまっており非常に参考になると思います。

自己紹介

2018年に東京工業大学電気電子工学科を卒業し、大学院進学時の転学科を経て情報理工学院の修士課程を修了しました。 修士課程の最終年度に米国大学院博士課程を受験するも全滅し、CMU Robotics Instituteの修士課程(Master's in Robotics)のみに運良く合格し進学しました。 その後、同学科のPh.D.プログラムから正式にオファーをいただき、2022年9月よりCMU Robotics Insituteの博士課程に進学予定です。

アメリカにおける出願事情

近年、アメリカCS博士課程は人工知能ブームが相まり競争が非常に激化しています。 例えば、CMU Robotics InstituteのPhDプログラムでは800人程度の出願に対して合格人数は35人程度(合格率約4%)と非常に狭き門となってるようです。 そのため、中国やインドを始めとする世界中の優秀な学生に対して出願パッケージを差別化し、アピールしていくことが重要になってきます。

合格するための戦略について考える

日本の大学から米国のCS博士課程に出願する際の基本的な戦略としては、以下の3つが主に考えられます。

  1. 学部の早い時期(学部2年ごろ?)から研究に取り組みトップ会議のワークショップや2ndや3rd Tierの会議への採択を目指す(トップ会議の論文があったらベスト)。その後、学部から直接出願する。この場合は研究実績よりもポテンシャルをより重視される場合が多いです。論文が出願時点で採択されていなくても、一定の研究経験があれば合格を得られる可能性があります。
  2. 修士まで日本の大学で研究に取り組み、トップ会議への論文の採択を目指す。この方法だと、志望大学の教員との研究経験やコネクションなどがない限り、基本的に最低一本はトップ会議に論文が採択されていないと合格はかなり難しいです。
  3. 米国大学院の修士課程に進学し、研究実績を積みながらトップ会議での論文採択を目指す。修士卒後で論文がない場合でも修士課程なら合格をもらえる可能性が高いです。授業と並行しながら研究を行うのは非常に大変ですがやりがいは大きいです。コースワークベースのプログラムではなく、CMUGeorgia Techなど一部の大学が提供する研究ベースのプログラムなどでは財政的支援を得られる場合もあります。

正直言って、どの方法も簡単ではありません。僕の場合は決断が遅く、2および3の選択しか残されていませんでした。結果的に最後の頼みの綱である3でなんとかなりましたが、1および2の戦略をまずは検討されることをおすすめします。 次に、出願パッケージのそれぞれの項目の重要度について(主観的ではありますが)少し解説したいと思います。

研究経験・実績

なにがともあれ、研究経験がなければ博士課程に合格することはできません。 これは必ずしも論文が必要ということを意味しないのですが、周りを見ている限りトップ会議の筆頭論文が少なくとも1本ないとCSトップ校への合格は難しいと思います。 日本では学部時代から研究室に所属することは一般的ではありませんが、直接教授などに連絡を取るなどすれば受け入れてくれる場合もあると思います。 早い段階で研究に取り組み始めることで、出願までに一定の研究経験・実績を積むことができるはずです。

推薦状

推薦状は唯一の客観的な資料になります。そのため、選考過程において研究実績と同程度(かそれ以上)に重要視される場合が多いです。 基本的には3通の推薦状が必要になり、2通以上は教授から書いてもらえることが望ましいです。 応募者自身がコントロールできないところではありますが、普段から自発的に研究をすることで良い推薦状を書いてもらいましょう。 逆に言えば、少しでも悪い推薦状を書かれそうな場合は、他の人に頼むなどの戦略も重要です。 僕は、1) CMU修士課程での指導教員, 2) 共同研究プロジェクトのPI, 3) 東工大修士課程での指導教員に書いていただきました。

Statement of Purpose (SoP)

大事だと思いますが、上記2つほどではないです。文法や単語などのミスはご法度なので、添削は何度もしましょう。 参考までに僕は下記のような流れで書きました。

  1. イントロ: PhDを通して目指したい将来像など
  2. 研究経験: 2段落に分けて今までの研究経験など
  3. 応募理由: 志望大学・教員を選んだ理由など

TOEFL

TOEFLに関しては100点を超えれば基本的に十分です。すべてのセクションで少なくとも20点は超えていた方が良いと思います。 勉強方法に関しては人それぞれかと思いますが、受ける前に目標点数を決めるのではなく一旦受けてみて自分の実力を知るのが大事です。 僕は初めて大学2年時にTOEFLを受けたときに70点代後半で絶望した記憶があります。 その後、研究室で英語をしゃべるように意識したり、インプットをなるべく英語に統一するなど意識することで最終的には106点まで伸びましたがスコアメイクにはかなり苦労しました。

GRE

GREを受け付けない大学も多くなっているので、まずは志望大学がスコアを必要としているか調べましょう。 点数に関してはQがそこそこ取れていて出願パッケージの他の項目が魅力的であれば、あまり気にされないと思います。 僕のスコアはV:145, Q:169, W: 3.5というお世辞にも良いとは言えないスコアでしたが問題ありませんでした。 GREを勉強する時間があったら、研究に時間を充てるほうがいいと思います。

奨学金

日本以外からの留学生を見ている限り、奨学金は合格には必須ではないように思います。ただ、一定の倍率を突破して奨学金に採択されていることはそれだけで一定の能力の証明になりますし、教員の財政的負担を減らすことができるので、応募資格がある場合は必ず応募しましょう。学校推薦が必要な奨学金は応募期日が早いことが多いので、早めに情報を確認されることをおすすめします。

事前コンタクト

事前コンタクトは重要ではあると思いますが、基本的には何も実績がない状態でメールを送ってもほとんど返ってきません。 それでも、少しでも可能性を上げるために必ず志望教員にコンタクトは取ったほうがいいと思います。 今までの研究の実績、志望研究室でやりたい研究について簡潔に書いて "Inquiry about potential PhD opportunities from Fall 20xx" のようなタイトルでメールを送るといいでしょう。

これからアメリカでCS博士課程を目指す方へ

博士課程合格への道のりは不安定なだけでなく、とてもストレスがかかります。僕は結果が出るまで毎日GradCafe(受験結果を投稿できる掲示板)を見ながらやきもきしていました。 もし受験に関して不安であったり、質問があればsiwase@cs.cmu.edu宛にメールをいただければ時間のあるときに答えられると思います。気軽に連絡してください。

by Shun